月の女神


「えぇ。ずっと病院で付き添ってるみたいですよ」


…母親が倒れた?それは、学校に来ていられないだろう。


「私も面会に行こうかと思って連絡したんですけど、まだ倒れられたばかりで詳しいことを検査してるから、って断られまして」


「一回直接彼女に会いたいんですけどね…心配です」


そういって黙り込んでしまう2人。



「電話はしているんですけど、声だけじゃどうもわかりませんからね」

「会いに行っていいか?と聞いても断られてて」

「心理カウンセラーの先生にも一応お話しておきました。こられるようなら話や悩み事だけでも聞くから、来て欲しいと」

「伝えておきます」

…大丈夫かなぁ。心配になる僕に、河西先生が口を開く。


「松岡ですけどね、母親と2人暮らしなんですよ」

「え…?」


「松岡が小さいときに離婚したとかで…父親は健在らしいんですけど一切会っていないと。いつ目を覚ますかわかりませんし、長くかかるようなら今後どうするかも心配なんですけどね…」



「松岡さんは何か言ってましたか?」

江藤先生の質問に、静かに首を振る。

「私は大丈夫です。しばらく休みますけど気にしないでくださいって」

「そんな…」

気にしないで、ってそんなの無理だろう。


あのいつも笑顔だった彼女が今、どんな顔をしているのか、心配になる。


「成績も良かったですし、皆勤状態だったので出席日数は今のところ大丈夫なんですけど…ちょっと連絡してどうにか会えないか聞いてみます」