“あの日”




朝から雨が降っていた。

しとしとしとしと

静かに雨が、降っていた。



「あーあー。花火大会…出来るかなぁ…」

窓の外を見ながら、溜め息混じりに呟く。

「そうねぇ…。強くなったら、中止かもね」

とお母さん。

「えぇー」

せっかく新しい浴衣も買って貰ったのに。

落ち込んでいたら、良いことを思いついた。

「てるてる坊主作ろうっと!」

まだ花火大会が始まる20時まで、9時間もある。

「今から雨雲をやっつけなくちゃ」

ティッシュを丸めて、出来たのは3体。

ひとつは髪の長い女の子。

2つ目は意地悪な顔をした男の子。

3つ目は髪の毛くるくるの男の子。

「上出来!」

祐くん、私、蒼ちゃんの順で窓辺に吊す。

雨が止みますように。としっかり願もかけておいた。