『神崎せんぱーい!!さよーならぁ!』
一時間目は体育。
運動靴の靴紐を結び直してると、ナイキの白いハイエースが視界に映る。
神崎先輩だ。
1時間目の授業が始まって5分も経ってない内に、帰っていく先輩の後ろ姿に、大きな声で挨拶をする。
遠くを歩く先輩は、少しだけ頭を下げてくれた。
告白をして振られてから、毎日が本当に楽しい。
隣の街に住んでいる先輩は、電車通学。8時10分には駅に着く。
その時間に合わせて、毎日駅前の細道で待って、先輩がホームから歩いてきたら少し後ろをついて歩く。
先輩を見つけたら、どんな時もどんな場所でも大きな声で名前を読んで、手を振った。シカトされる時もあったけど、笑ってくれる時もあるから、何度も何度も声をかけた。
授業で使うノートやクリアファイルには、すべてに【神崎 瞳】って書いて
日直の時は黒板にまで神崎って書くあたしに、担任の倉田は呆れてた。
どうやら完全に浮かれてたあたしは『神崎先輩〜』って寝言までいってたらしく、ママにもどんだけ好きなのって笑われたり
恋に、恋してた
まだ12歳だったあたし
完全なるストーカー行為に、先輩は怒ってたと思う
「もういい加減やめてくんない?別の人を好きになればいいじゃん。俺のどこがいいわけ?」
って電話がかかってきたこともある。
携帯を持ってなかったから家の固定電話に(笑)
