いつもと変わらない朝。
冷たいワイシャツに袖を通して、少し大きめに作った制服を着て、スカートは短め、買ったばかりのローファーはカカトをつぶして履く。
坂道を下って、歩いて20分。
校門をくぐろうとした時、
『優くーん!きたよ〜!!』
テニスコートがある中庭にいたシンが大きい声で叫んで、神崎先輩の周りの友達がヒューヒューって煽る。
「俺のこと好きな子〜?」
「そーそー!」
「まじかよ〜!モテモテじゃーん」
ギャハギャハ笑う声。
シンのお兄ちゃんが、神崎先輩の友達だったから、確かに可愛がられてたけど
本当に言うなんて思わなかった。
恥ずかしいやら悔しいやら何とも言えない感情が押し寄せてきて、下駄箱まで早歩きで向かう。
いつもと変わらない朝
になるはずだったけど、全学年が通る中庭でシンが余計な事を話したせいで、【学年一荒れている神崎先輩を好きな1年】としてあたしは噂になった。
入学して1ヶ月も経ってないこの日から、神崎先輩が卒業する時まで、あたしと神崎先輩を知らない人はいなかったね。
学校中、誰もが知っていた。
あたしが、あなたを好きだったこと
