「ユタカだ!忘れんなよ!!」 「はいは~い。じゃあ私の名前知ってる?」 「知ってるけど」 少し目を逸らす牧瀬。 こいつ、実は知らないんだな! 「じゃあ言ってみてー」 「…ひ、ひ、陽奈……だろ?」 絶対知らないだろうと思っていた私は、予想外で顔が熱くなった。 牧瀬は窓を開けて風に当たっていた。 野次たちの声は止まなかったが、先生がバンッと机を叩いたので、教室は一瞬にして静まった。