私は動けなくなった。 こんなに人の顔と自分の顔が近づくのは初めてだった。 かするように少しだけ触れた牧瀬の唇は、思ったより、ずっと暖かかった。 蒸し暑い教室の中で、私からは熱が発散されているようだった。 息の仕方を忘れてしまった。 「秋山・・・」 牧瀬はキスとキスの間に私の名前を呼ぶ。 私の首に回された牧瀬の腕。 私はどうしたいんだろうか。 「・・・ふっン」 息がもたなくて、声が漏れる。