夏休み間近な、高校1年生の夏。


蝉が今日も休むことなく外でうるさく鳴いている。


私立高校である、鷲松(ｼｭｳｼｮｳ)学園高校は冷暖房完備の居心地のいい高校。


そんな学校の教室で、皆がお弁当を広げる中、１人あたしは、ある雑誌を開き、食い入るようにみる。



「澪ーってば！いつまで、陸上の雑誌読んでいるの？早く購買行こうよー！」



「えーちょっとまって！もしかしたら出てるかもしれないし……。なんたって今月はスプリンター特集なんだって！」



「あー……あたし、もうお腹すいて死にそう……」



あたし、川口澪(ｶﾜｸﾞﾁ ﾐｵ)の隣でわーわー騒いでいるのは、同じ陸上部で親友の佐藤紗名(ｻﾄｳ ｻﾅ)。


それでもあたしはページをめくることをやめない。



そして、いつも通り、パタンと雑誌を閉じて、ため息を溢す。


今月も載ってないかぁ……。



「そんな落ち込むなって……。澪の愛しの王子様が載ってないのはいつもの事じゃん？」



紗名は、あたしの机に両手をついて、あたしの顔を覗き込んでくる。


いつものことか。


確かにそうなんだけど。


ってか、王子様とか、そんなんじゃないんだけどなぁ。