「要はお前は、瞬に負けたくねぇんだろ?」



少し笑ってお父さんがあたしにそういってくる。


何もかも御見通しだってかんじだ。



「そうだよ」



あたしはやっと顔をあげて、お父さんのほうを見た。


だってさ、悔しいじゃん?


あたし、瞬の前であんな偉そうなこといったのにさ。


瞬にも言われたから。


__『諦めるのか?』


嫌だよ。


あたしを誰だと思ってるの?


諦めないよ。


諦めたくないよ。



「お前の育てた選手を……瞬と同じ舞台で走らせる。お前の育てたやつが瞬に勝った時……お前は瞬に追いついた……いや、追い越したってことになる。どうだ?面白そうじゃねぇか?」




意地悪な笑みがお父さんの顔に浮かんだ。



あたしにもきっと、同じような笑みがこぼれているんだと思う。


あたしの育てた選手が瞬と共に走る。


あたしが……風を作る。



「……いいじゃん。それ」



「だろ?……ジャックはあれでも、この地域じゃ頭一つ分抜き出ている選手らしい。……タイムは10"30とか言ってたぞ?」



瞬と同じくらいのタイム。


ワクワクしてきた。


自分が走るわけでもないのに……


あたしは走れないという事実は変わったわけではないのに……