「ふーん……そんなことがあったわけねぇ……。過去に何かがあったのは確かだよね」



部活帰り、今日起こったことを、駅のベンチに座ってあかねさんに相談してみる。


紗名は近くの自販機で飲み物を買っている。



「きっと走らないのはケガとかのせいではないんです。”走れない”とは言っていませんでしたから。

きっと何か……勝木には何か誰にも言えない過去があると思うんですよねぇ」



「そうだねぇ……。

でもさ、無理に聞き出そうとしなくてもいいんじゃない?

その勝木くんの心を澪が開いてあげることからまずは始めるべきじゃないかな?彼かすごいスプリンターとかっていうのを一度置いといてさ。

後ね、ほら、明日から夏休み入るでしょ?今はとにかく自分のこと考えな。駅伝なんてあっという間なんだし、合宿も盛りだくさんにあるしね」



そういって、あかねさんは、優しく笑った。


そこへ、紗名が戻ってきて満足そうに買ってきたジュースを飲みだす。