「じゃあ、理由だけでも言えよ。なんで走らない?」
奴らの1人が口を開いた。
あたしもひそかに聞き耳を立てる。
「……俺は走ったらいけねぇんだよ」
その瞬間、あたしを含め、奴らが首をかたげる。
走ったらいけない……?
それって……誰かが決めるものなの?
誰かが規制するものなの?
誰にそんな権利があるの?
風をなんで閉じ込めてしまうの?
「なんでだよ。誰だよそんなこと言う奴」
奴らの1人が勝木の机にドンっと手をついて体を乗り出した。
少し怒っているようだった。
あたしも、内心怒りで一杯だった。
「誰とかじゃねぇよ」
その言葉の意味があたしたちにはわかるはずもなくて……。
「……意味わかんねぇよ」
そういって、飽きれたのか、勝木の周りから人が離れて行った。
勝木の顔は相変わらずって感じだった。