「どういうことだよ」
俺には意味が分からなかった。
「澪がいなくなってさ……後輩も入ってきて……切り替えなきゃいけないのは分ってるんだけど、なかなか前に進む勇気がでなくてね。……何度も何度もフラッシュバックするんだよ。あの全国高校駅伝の時、必死にあたしのことを応援する澪の姿が。
澪がいたから、あたしたちは、あの場所に行けたわけでさ……あたしには、澪を忘れて部活に……走ることに集中することなんてできなくて」
紗名の顔は深刻だった。
俺と同じだって思った。
前に進んでいいのか……わかんねえんだ。
分んねえから、戸惑うんだ。
戸惑うから、立ち止まるんだ。
「それはある意味、逃げてるって言うんじゃねえの?」
突然、横から聞こえた声。
そこには、さっきまで机に突っ伏して寝ていたはずのコウが俺たちを見てきた。
「瞬、お前ふざけんなよ。澪の想い無駄にすんじゃねぇよ」
澪の想い……?
「どういうことだよ」
「澪はきっと、お前に追いつきたかったんじゃねぇの?だから、誰にも言わずにどっかいっちまったんじゃねぇか。絶対帰ってくるっつってんだから、俺らが信じなくて誰があいつを信じてやるんだよ。
お前それでも、澪の彼氏かよ。俺が奪うぞ?」
コウがため息交じりにそんなことをいって、俺らの方を見てくる。
「瞬がコウに負けるはずないじゃん」
そういって、紗名は、声を上げて、あははと笑い出した。



