__フワ……




グラウンドに立てば、今日も風が俺の頬を撫でる。



俺の心は空っぽのままで……




「瞬」



聞きなれた声が俺の名前を呼ぶ。




「なんだよシマ」



振り向けばシマが少し心配そうな顔をして立っている。



もう、季節は春。



雪はもう降らなくて、グラウンドを使える回数も増えた。


本当は喜ぶべきなんだ。


本当は……だけどな。




「澪……まだ連絡取れないのか?」



「ああ」




お前がいない。




この鷲松高校にあの川口澪の姿はない。


このグラウンドにあいつの笑い声はもう響かない。