「えー、じゃあ、自己紹介頼むな。軽くでいいぞ」
山ちゃんが、一歩引いて、彼に注目を譲る。
彼はゆっくりと、中央の教卓にたって、その固い口をゆっくりと開いた。
「勝木瞬(カツキ シュン)。…よろしく」
それだけだった。
視線は下の方。
前は決してみない。
まるで、自分はここにいちゃいけない存在なんだってそう思っているのか……そういう雰囲気を出している。
かすかに見えた目には色はなかった。
冷たかった。
怖かった。
だけど……何かを求めているような……そんな感じの目をしてた。
「えーっと……。勝木は、あの川口の隣な。よし、今日のHRは終わり。お前ら仲良くやれよ」
そういって、山ちゃんは足早に教室を出て行った。
勝木は、ゆっくりとあたしの方に近づいてきて、無言で席に着く。
完璧に整った容姿をまとい、陸上とは縁を切ったと思われる風が今あたしの隣にいる。
あたしの探し求めた風が……風になれる奴が……今こんなにもあたしの近くにいる。



