「まあね。……100m走ってた。風みたいな奴と一緒に」
「あははははっ!それであんなきつそうな顔してたんだっ!。澪、100m苦手だもんね。
もしかしたらさ、その風、王子様だったんじゃないの?澪が風っていうの、王子様だけだし」
確かに"彼"も、あたし探している"幻のスプリンター"も日に焼けた茶色い髪と小麦色の肌をしていた。
走りも今思えば……そっくり……同じだった。
どちらも、風だった。
「……そうかも……」
そうだよ。
あたしの夢に出てきたのは、あたしの探していた幻のスプリンター。
何かが変わる……それを知らせてくれたのかな?
駅を出た瞬間、ふわっとした風があたしと紗名の髪を揺らした。
見上げれば、青空が広がっていた。
雲一つない青空。
なんだか気分が晴れ渡る。
眠気なんて一気に吹っ飛んだ。
「さて、今日も一日頑張りますか」
あたしは立ち止まり、上を見上げて、独り言を言ってみる。
紗名はあたしが止まったことにびっくりして、振り返った。
そして、あたしの手を引いていた手を離す。
紗名は笑顔で、「いこうか」といってあたしの前を歩いてゆく。



