あのころは、そんなものだった。
それだけだった。
だけど今は違う。
例え後ろ指を指されようが俺はもう逃げない。
俺の走りでそいつらを納得させる。
”ここは、俺の領域。お前らが入ってくるところじゃない”と。
風となり、翼を身にまとう。
その姿はまるで……
「鷲だな。……お前は鷲のように走る。スタートまでは闘争心を静かにもやし、スタートのピストルが鳴ったとたんに、誰よりも素早くお前は獲物であるゴールへと食らいつく。
その飛ぶ姿は優雅で、誰の心をも引き付けるだろうな。
きっと、お前はすごいスプリンターになれる。拓夢と、啓太もお前の走り見たかっただろうな。」
顔にしわを寄せてはははっと笑うコーチ。
「あいつらも見てますよ。というか、きっとあいつら、俺と一緒に走ってるんだと思います。」



