少し、気を抜けば涙が出てきそうだった。
「そのスーパーヒーローのお友達。もしかして、少しひげが生えてて、片手に缶コーヒー持っていなかったか?」
「…うん。そうだよ。そのおじさんが、そういったの。」
やっぱり…
スーパーヒーローのお友達は…澪のお父さん…。
「俺のことも言っていたのか?」
「うん、そうだよ。おねぇちゃんといたおにぃちゃんもスーパーヒーローだからって。そのお友達と約束したの。おにいちゃんに会ったら、ちゃんと感謝するって。
おにぃちゃん。あの時澪を助けてくれてありがとう。澪、もう車の前には飛び出さないよ。ちゃんと、道路渡るときは、右左確認して、お手てあげて渡るっ!
せっかくおねぇちゃんに助けてもらったから、澪、無駄にはしないよ。」
そういって、笑った澪の顔は、素直で、どこまでも澄んでいて、愛らしかった。
俺は優しく澪の頭を撫でた。
「……おねぇちゃんに…伝えとくな…。」
__澪、お前のすくった命はでかかったよ。
そもそも、命は天秤にかけてはかるものじゃないよな。
一時期は、お前が救ったこの子のことを恨んだ時もあった。
なんて、最低なんだって今になって思うよ。
迷わず飛び出したお前を今だからこそ本当に誇りに思うよ。
ありがとな。
こんな、小さな子の未来を守ってくれて……ありがとな。



