On Your Marks…~君と共に~



澪は、何も失ってはいないんじゃないかって。



だけど、それは浅はかな考えにすぎなくて…





「……こんなにたくさんの人……なんで?」



澪のその言葉に、現実を突き付けられた。



忘れてはいけない。







澪は俺たちのことを覚えていないということを……


そして、改めて気づく。


記憶と言うものの儚さを。



人は失ってはじめて、失ったものの大切さに気づかされる。

なんで、あのとき気付かなかったのだろう。



それは、誰もが"変わらない未来"というものを信じているからであって……


"変わらない未来"が当たり前になっているからであって……


でも、あるとき、それが当たり前ではなくなったら?


そんなこと、自分の身に起こりうるなんて、誰もが想像もしていなくて……













「……あ、あのね。この人が澪のお父さんなの。


そして……」




「あたし紗名っ!澪とはね、小さい時から仲良かったの。

……よろしくね、澪っ!」



おばさんの言葉を遮り、紗名が笑顔を作って、澪に近寄った。


泣き虫な紗名が、涙を今になってもこぼしていないのは、きっと澪のため。


泣くまいと、自分に言い聞かせているんだと思う。