「瞬君よね?」
誰かが俺の肩を優しくたたき、話しかけてきた。
だけど、俺には返事する余裕はなくてただ、コウコクとうなずいた。
「あのね、澪ちゃんは今、意識を取り戻したけど、脳の手術をしたから、ぼーっとしてしばらく、過去と現実がごっちゃになって混乱しているの。
だけどね、澪ちゃん若いし、長くても10日くらいで整理できると思うの。
もし、記憶障害とか起きていなかったらの話なんだけどね。
今日はもう遅いし帰りなさい。詳しいことはこれから調べるからね。
瞬君は……信じてあげて」
そういって、にこっとわらってその看護師も作業に取り掛かった。
__『……だ……れ?』
病室を出るとき、再び澪のその声が脳裏をかすめた。
俺はその声を振り払うようにぴしゃりと扉を閉めた。
__『瞬君は……信じてあげて』
信じる?
信じてきたよ。
お前が俺に走れと言ったあの日から俺は、お前を信じてきた。
俺にはここでお前を信じて待つことしか出来ない。
だってな。
俺には何の力もねぇんだ。
……俺は無力だ。
そんなことを一人思いながら歩く夜道はいつも通り寂しかった。
時々吹く夜風が……生ぬるくて気持ち悪かった。



