「…っ!」





「一瞬だけだが、昔の走りをお前はしたよ。一瞬だけだったがな。」





コーチは、それから瞬の肩を二度叩き、去っていった。



あたしは急いで、スタンドを駆けおりて、瞬の元へと向かった。






その顔は、無表情なんだけど、瞬の目には強い意志が見えた。






「瞬…?」





あたしは恐る恐る、瞬に声をかける。





「…帰る…か。」





そういって、あたしに背を向けてその場から離れる瞬。