「しゅーんっ!」
「瞬っ!行けよー!」
「お前なら行けるぞ、瞬っ!」
会場から聞こえる歓声。
俺は、足全体を手のひらで叩く。
大丈夫、大丈夫……
俺は走れる。
__「On Your Marks……」
スタートを知らせるアナウンスが流れる。
さっきの歓声が嘘のように、シーンと静まり返るスタンド。
「ふぅ……」
息を吐いて、自分を落ち着かせる。
そして、ゆっくりと、スタブロに確かな自分の足を置く。
前を向けば自分だけの道がある。
俺だけの道。
俺だけのコース。
ここを走ればいい。
ここで、俺は風になる。
__「Set!……パーンっ」
お前のために、俺はもう一度風になろう……。
今踏み出す未来への一歩