砂糖、小麦粉、卵にクリーム。

それらが並べばおのずと浮かぶ食べ物にテンションが上がる。

私は甘党だ。

もう一度言う、甘党だ。

甘いものの誘惑には例え世界が滅びようと勝てる気がしない。

今日はフルーツタルト。

教室中から甘い匂いが立ち込めてふわふわとした甘い気持ちになる。

私の班も後はトッピングだけ、もう少しでこの愛らしいフルーツタルトを私の口の中に運び入れることができる。 この高揚感をどう表せばいいのか、ただただ食べたいという思いが膨らんでいく。

「とてもおいしそうですわね。」

同じ班の姫木真理亜がやっとその重たい腰をあげた。

「そーでしょ? 皆でがんばったもんねー」

立花愛梨がにっこりと私たちに微笑む。

でた、女子特有の技。

「ううん。 皆でなんて、愛梨ちゃんがほとんどやってくれたようなものだし、愛梨ちゃんの料理の腕前がなかったら、私たちどうなっていたことか。ねぇ?」

「「そーそー!」」

実際、立花愛梨がほとんどやっていた。 言葉通り右に出るものはいないほどの腕前で、楽しくやろう、の他の班と違い、どれだけ立花愛梨の邪魔をしないか、に必死な班だった。

立花愛梨の女子力アピール、極めつけは[皆でがんばったもんねー] もちろん皆でじゃない、立花愛梨が頑張ったというコトと、立花愛梨の料理の腕前を褒めろという暗黙のルールだ。

全て計算し尽くされた立花愛梨が輝けるステージ演出。

ま、私はフルーツタルトが食べれればいいけど。

「おいしい! さすが愛梨ちゃんだね!」
「えー、大袈裟だよー。」

吐き気がするほどみえみえな会話。

その横でナイフとフォークを器用に使って食べる姫木真理亜は、他とは違うという洗練されたオーラが滲み出ている。 育ちの良さが見て取れるのは計算ではなく素だろう。