あたしの好きな人





「うぶっ」

「え、大丈夫?」





廊下の角を曲がったとき、稜が誰かに直撃した。


吹き出しそうなのは置いといて……



「お兄ちゃん!」

「え、波奈か!来てたのか!」



直撃した相手があたしのお兄ちゃんでよかったと思う。



「お兄ちゃんの教室っでどこ?」

「えっと……、ていうかコイツ誰?」

「え?」

「あ、どーも。波奈の彼氏の近藤稜です」




なんだ、普通に自己紹介くらいできたんだ。



………って、ちがう



「ええええええええええ!?」

「お兄ちゃん違うからねー、この人彼氏じゃないからねー、ただの付き添いだからねー」

「な、なんだ…」




稜のこの手のジョークには慣れた。


どんだけあたしの彼氏になりたいんだよ!



なんつって……何か笑えないわ。