一番近くて一番遠い

「ああ!
メンズモデルの聖也(せいや)くん!
SANAちゃんの同じで
カリスマモデルだよぉ!
八重はギャル男とか
興味ないから知らない?
付き合ってるらしーよー!」

その瞬間だった。
八重は自分の中の何かに気づく。

紗南には彼氏がいなくて当たり前
小さい頃からの錯覚なのか
そんな気持が八重にはあった。

紗南に一番近い存在は自分だと
中学の頃までは勝手に思っていた。

けれど
紗南がモデルの仕事を始めてから
どんどんと遠い存在になり
今では知らない人のようにさえ感じる。

紗南に彼氏がいると知った瞬間の
嫉妬心といったらなかった。

今まで自分が
どんな女の子と付き合っても
浮気されて
嫉妬するようなことはなかったのに。

紗南を取られた…
まるで幼い子供のような
嫉妬心に襲われた自分に
ものすごく驚いた。

こんなチャラそうで頭悪そうな奴かよ…
なんて自分を棚に上げた
自分勝手な嫌味まで浮かぶ始末。

自分の中に
そんな醜い自分がいたなんて…
八重は自己嫌悪に襲われた。


いつからかはわからない。
幼い頃からだったのかもしれない。
紗南がそばにいて当たり前。
自分にとって
一番近い存在だと思っていて
それがまさか恋心だったなんて
気づかなかった。

紗南は他人のもの…
八重が自分の気持に気づいたのは
そう思った瞬間だった。