「なんで忘れるの!?
ちゃんと持って来てって
言ったでしょ!?」

メイクルームに響く怒鳴り声。
怒鳴り声の主は凛花の師匠の
北川 麻美(きたがわ あさみ)35歳。
とても仕事に厳しく
周りからも恐れられている彼女。
もちろん腕は素晴らしいのだが
とにかく怖い。

凛花は事務所に
メイク道具の入ったバッグを
一つ忘れて来てしまった。

アシスタントになって1年経つが
八重とは違って
凛花は挫折しかけていた。

必ず1日1回はドジを踏んでしまう。
きちんと確認しているにもかかわらず
何処かが抜けている。
その度に凛花に落ちる雷。
凛花は日に日に意気消沈する。

同じアシスタントである
八重に相談しようとしたが
八重も忙しくて都合が合わない。

紗南も同じく忙しい毎日で
会うことができなかった。