「俺はモデルとは付き合わない。」

はっきりと健は言った。

「モデルに恋愛感情抱いたら
撮れる写真が変わる。
それになにより
もし自分の好きな女がモデルだったら
他の男達に見られるなんて
たまらないからな。
だから俺はモデルとは付き合わない。
紗南に限らずだ。」

「はっきり言いますこと…」

紗南はきっぱり振られた。
胸が痛む。


居場所が一つ消えた。


「ごめん、帰る。家に送って。」

流れ落ちそうな涙をこらえる。

「いい子だ。」

健はそれに気づかないフリをして
行き先を変えた。

「もう付き合ってって言ったって
付き合ってやんないよ。」

「俺が後悔するくらい
いい女になれよ。」

健のその言葉が唯一の救いになった。
目標が一つ出来た。
健を悔しがらせるほど
いい女になってみせる。
紗南はそう心に決めた。