一番近くて一番遠い

聖也と1年くらい付き合った頃
モデル友達が慌てて紗南の所へ来た。

「聞いた!?
聖也、女妊娠させたって!!」

…やっぱり。
薄々と紗南は気づいていた。
聖也が他にも女がいた事。
そもそも自分に声をかけて来た時も
軽かった。

そんな話を聞いても
紗南は悲しくなかった。
妊娠させられたのが
自分じゃなくてよかった。
そんな気持ちになった。

自分も
八重とやっていることが変わらない。
そう思った。

たいして好きでもない
聖也と付き合った。
そして浮気されていても悲しくない。

もちろん聖也とは即サヨナラ。
聖也は好感度ガタ落ちでモデル廃業。
そのあとは泥沼生活だと耳にする。

「ファーストキスもバージンも
ロクなやつじゃなかったな。」

そう呟いて苦笑いする。

この業界に入ってから、
恋愛とは何なのか
わからなくなっていた。

紗南みたいな例は珍しくないし
自分を売り込むために
枕営業するモデルだっているって聞く。
純粋な恋愛って一体何なんだろう。
そう思ってしまうようになっていた。

こんな薄汚れた自分を
八重はどう思うだろう…
たまにそんな考えがよぎる。