紗南は黙った。わかっていた。
自分は有名人。
稼ぎも立場も八重のはるか上。
それが男にとっては
苦痛になることを。

「だから時間が必要だったんだ。
お前を追い抜く時間が。
幸い、絵里がそのきっかけを
くれたんだよな。」

takaは苦笑いする。

「あいつは今、NYじゃ若者の間で
知らないやつはいないくらいの
ブランドを手に入れた。
あいつのセンスはもともとよかった。
スタイリングだけの器じゃないとは
思っていたけど、まさかここまで
急成長するとはな。
これも全て紗南への気持ちが
あいつを後押ししたんだろうな。」

紗南はグラスを傾け
カクテルを飲み干し、ボソッと呟いた。

「八重に会いたいよ…」

凛花がそっと紗南の頭を撫でる。
takaはメモをそっと紗南に手渡した。

「あいつの帰国日程と
泊まるホテルだ。」

紗南はそれを受け取り笑った。