「そのうちわかる。
俺の過去は消せないんだ。」

「…八重?」

「待っててくれとは言わない。
ただ、俺はお前にふさわしい男になって
絶対迎えに来るから…
今は俺と別れてくれ…」

その言葉を聞いた紗南が
八重から体を離す。

「やだ!
なんで八重と別れなきゃいけないの!?
私はずっとずっと八重が好きで
やっと八重は
私のものになったのに!!」

きっと紗南は泣いている。
でも、それは雨の雫でわからない。

「俺が言いたいのはそれだけだから…」

八重はそう言って立ち上がり
歩き出した。

「ねぇ!八重!?どこに行くの!?
八重ってば!?」

八重は振り返らず、立ち止まらず、
ただゆっくりと歩いて行った。
紗南の声は雨音にかき消され
八重の姿は闇夜に消えて行った。
紗南は両手で顔を覆って
しゃがみこんだ。



強い雨に打たれながら…