一番近くて一番遠い








「やめたいってお前…」

その日の夜、事務所に戻った八重は
takaに退職を願い出ていた。

「なんでいきなり…もしかして
引き抜きか?」

「そんなんじゃないです。」


「じゃあなんで!?
お前はもうすぐ自立できるんだぞ!?
紗南と同じ立場に立てる…
俺はそこまでお前を育てたんだぞ!?」

takaは必死に訴える。

「takaさんには
本当に感謝しています。」


八重はうつむきながらそう言うだけだ。



「八重。歯食いしばれよ。」

takaはその小柄な体格からは
想像できない位の力で
八重を思い切り殴った。

八重は無抵抗でtakaの拳を受け入れた。
口の端が切れて血がにじむ。

「恩知らずついでに
俺の頼みを聞いてもらえませんか?」

八重はまっすぐtakaをみつめた。
そのまっすぐな瞳に答えるように
takaも無言で八重を見た。

「いいだろう。言ってみろ。」