一番近くて一番遠い

母親に促され
紗南は八重の家に上がる。

昔は毎日のように
お互いの家を行き来していた。
懐かしい八重の家の香りに
思い出が蘇ってくる。


八重の部屋のドアの前に立つ。

紗南はノックはせず
そっと八重の部屋のドアを少し開け
中を覗く。

八重はベッドで寝息を立てていた。
昨日帰ってくるのが遅かった八重。
疲れている様子だった。

紗南はそっと部屋に入って
八重が寝息を立てるベッドに近寄る。
八重はミノムシのように
毛布にくるまって寝ていて
紗南はくすっと笑った。

そっと八重の髪を触る。
少し伸びかけたパーマを指先で弄ぶ。
背が高い八重の髪を触る事なんてない。
こんな近くで顔を見るのも
あの夜以来だ。

そんな事を考えながら
じっと八重を見つめていると
何かを感じ取った八重が
ぱっと目を開ける。