一番近くて一番遠い


「SANA…もうちょっと笑えない?」

カメラを抱えながら困る健。
紗南はスクリーンの前に立つものの
鋭い表情しか健に見せていない。

「無理。あんたに笑う顔なんてない。」

紗南はハワイの仕返しとばかりに
ふてくされて撮影を続ける。

「だめだ。休憩はさんで。」

健はため息をついてカメラを置き
SANAの元へ歩いて行き
その手をガシッとつかみ
スタジオの隅にSANAを連れて行く。

「痛い!離してよ!」

スタジオは一瞬
緊迫した空気に包まれる。
八重は気にしないフリをしながら
2人を目で追ってしまう。


「お前、ふざけるなよ?
仕事だぞ?ハワイの事怒ってるんだろ?
仕事とあれとは別だろ?
プロなんだからしっかりやれよ。」

珍しく苛立っている健。
紗南は知っていた。
健は自分の思う仕事が出来ないことが
一番気に入らない。
紗南はそれを知っていて
わざとふてくされてみせたのだ。

「八重をバカにしたし
私への嫌がらせも
謝ってもらえてない。」

紗南は健の剣幕に怖じけづく事もなく
一切表情を変えない。