「その顔…あたし以外の女に
見せないでよ?」
紗南も負けじと言い返す。
「公に出来ないけどそれでもいいの?」
紗南が不安そうに言う。
「アシスタントだけどいいか?」
それに答えるように八重が言う。
「デートだってコソコソ…
そこまで言いかけたが
八重に口を塞がれた。
すぐ目の前に八重がいる。
紗南の唇は八重の唇で塞がれていた。
八重は一度唇を離して
「目…閉じろよ。」
そう言って紗南の目を片手で塞ぎ
もう片手で紗南をしっかり抱き寄せ
再び唇を重ねた。
紗南は頬を真っ赤に染めながら
まだ開けていない缶コーヒーを落とし
八重の背中に手を回した。
ベンチの下では
2人の缶コーヒーが
ベンチの上の2人のように
寄り添って転がっていた。