八重が服飾の専門学校を目指したのは
紗南への想いに気付いた時。
もともとファッションに興味はあったが
ファッション業界に
進むつもりはなかった。

でも、普通の大学へ通って
普通の会社に勤めて
ずっと変わらぬ立場から
紗南の存在を意識するくらいなら
同じ業界に入ってやろうと
八重はこの進路を選んだ。


「やぁちゃん!」
コンビニの袋を持って
学校の廊下を歩く
八重に抱きつく小柄な女の子。
秋山 凛花(あきやま りんか)20歳。

「八重にお弁当買って来たから
一緒にたーべよ!」

ニコニコと笑顔を振りまく凛花。

「あのさ、普通はお弁当作って来たから
一緒に食べよう。じゃねぇの?
コンビニ弁当って…」

ため息をつく八重。

「あたし料理できないもーん!」

自信満々に胸を張る凛花。

「それが男を口説く女のセリフかよ。」

えへっと笑って
八重の周りをウロチョロする。
八重の身長が高いせいもあり
小柄な凛花は小動物のようだ。

「凛ー!!俺のはないの??」

そんな凛花を羽交い締めにするように
信が凛花の背後から現れた。

「きゃっ!ちょっと離してよ信!?」

迷惑そうにもがく凛花。