一番近くて一番遠い

紗南が身支度を終え
マネージャーの部屋へ向かおうと
廊下に出ると健が部屋の前にいた。

「あ…健さん。さっきはありがと。」

「もう大丈夫か?」

健が微笑む。

「うん、大丈夫。」

紗南と話していると、紗南の背後から
八重が歩いてくるのが見えた健。
健はそれを確認すると
紗南の頭を優しくなでて見せた。
八重が紗南と健に気づいて立ち止まる。

「ちょっ…やめてよ。」

紗南が顔を真っ赤にして健から離れる。
その拍子に立ち尽くす八重に
気づく紗南。

「あ、八重…」

八重は紗南の赤らむ顔を見て
ムッとした表情になり
紗南と健を避けるように
無言ですっと2人を通り越した。

部屋へ消えていく八重の背中を
紗南が悲しそうに
健はイタズラな笑みを浮かべて
見送った。

「八重…」

紗南はキッと健をにらんだ。