一番近くて一番遠い


「坂本さんに聞いたのよ。」

坂本とは、紗南が健を未だに好きだと
勘違いしている編集部の女の子。
坂本 絵里(さかもと えり)20歳。

「そのことなんだけどさ。
結構前の話なんだよね。
私が坂本さんに話したんだけど
その子まだ私が健さんの事
好きだと思ってるみたいで…」

「え?そうなの?」

マネージャーがきょとんとする。

「うん。
もうきっちり振られてるから。」

紗南の古傷が少し痛む。

「そうだったの…それはごめんなさい。
でも紗南、坂本さんに話しちゃったの
まずかったんじゃない?」

「え?」

「彼女あまりいい噂ないわよ。
父親がお金持ちみたいで
高卒でコネ入社したらしいのよ。
芸能人と知り合うために
この業界に入ったらしくて
モデルとかいい男には
積極的に近づくみたい。
ゴシップも大好きで
口がすごく軽いらしいから…」


「なにそれ…早く言ってよぉ…」

うなだれる紗南。

「知ってると思ったのよ…
あ、食事はどうする?
ルームサービス取りましょうか?」

紗南はちらっと時計を見て

「まだレストランやってるよね?
レストラン行こうかな。
せっかく来たんだし。」

そう言ってゆっくりベッドから降りた。

「そう?じゃあ私も行くわ。」

マネージャーはそう言って
自分の部屋へ
荷物を取りに戻って行った。