一番近くて一番遠い


「SANA!」

撮影していた健が叫んだ。

SANAは波打ち際にバシャンと倒れた。
八重は慌てて駆け寄ろうとする。
しかし、編集部の女の子に止められた。

「なんだよ!?離せ!」

イラっとして、女の子を睨む。

女の子は

「SANAさんは
健さんに任せましょう。」

と言った。
そう、八重を止めたのは
SANAが健を好きだと勘違いしたままの
あの子だった。

「え?」

八重は眉間にシワを寄せる。

「SANAさん
健さんに介抱されたいハズですよ。」

意味はわかるでしょう?という表情で
八重を見た。

「まさか…」


なにも知らない八重は
SANAが健を好きだということを
この時知る…
彼女が勘違いしているとは知らずに…





「SANA…大丈夫か?」

健はカメラをアシスタントに預け
一目散にSANAを抱えていた。
自分の服がビショビショなのも
お構いなしだった。

「健さん…ごめんね。
ちょっとムリしちゃった…かな。」

力なくSANAが笑う。

「夜の撮影分はスタッフに
なんとかさせるから
お前はこのまま休め。
よく頑張ったな。」

健はそう言って
スタッフに渡されたバスタオルに
SANAをくるみ、ひょいと抱きかかえ
そのまま宿泊先へと向かった。

八重はただ、その光景を
見ているしかなかった。
そんな八重の手はぐっと握られていた。
やり場のない気持ちを
少しでも和らげようと…