「ほら、みんなー起きなさい」

「奏姉ちゃんなにぶりっ子してんのかーーー??」

「そやそやーー!都言葉やーーーーーー!!!!!!」

幼い彼等の世話は本当に神経を使う。
今日も奏は顔をひくひくさせながら、

「み、みんなそんなこと言わないの!ほらちゃっちゃと起きて朝ご飯食べて?!」

都言葉に相応しくない形相で叫ぶ

「ちゃっちゃとやってーー!」

「朝ご飯やってーーー!」

ぷぷぷと笑いながら尚も布団から出ない双子の弟たちに痺れを切らし、遂に奏は

「はよ布団から出らんかーい!さっさと朝飯食ってしまわんかーーーー!」


と田舎言葉を出してしまう。


「これ!奏!」

母が味噌汁と粟など雑穀を混ぜた米を並べながら叱りつけた。

「都ではそんな言葉遣い浮くかんな?意識して今から使っておくべ」

「………うん」



家族全員で食卓につく。

決して豊かとは言えない暮らし。

父の先祖も母の先祖も、何百年も前からお天道様に振り回されながら生活してきた。


(都で縁談なんて、二人共頑張りすぎ…)


当然のようにこの村で死ぬまで暮らすと思っていた。


(もうこの村に帰ることもないんだろう……)


結婚相手やその家族に不満がある訳でもない。
むしろたった一人で嫁ぐ奏を家族以上に案じてくれた、優しい人達だ。

五兵衛さんは

「ゆっくり夫婦になっていきましょうね」

と微笑んでくれたものだ。

(五兵衛さんに恋出来るのかな…?)

きっとそうではないだろうと、奏は自問自答した。好きにはなるだろうが、恋ではない。


(結局、一生恋出来ないのか〜〜…)


奏はうなだれると、既に食べ終わった全員分の食器を片付けた。