せめて最初の頃みたいに涙を見せてくれれば慰めることも元気づけるこも
できる。
だけど、ずっと笑顔を保っている心春に
大丈夫⁇
なんて聞いちゃいけないような気がして言えなかった。
ううん…。
ただ私に聞く勇気がないだけなんだど…。
たまに、ほんの一瞬なんだけれど
心春は悲しそうな表情を私にみせる。
…ほら、また。
板にペンキを塗っている心春の表情は
とてつもなく悲しい表情をした。
いつも明るい心春だからこそ
悲しい表情をみせられると私まで泣きたくなってしまう…。
そして今日も心春は途中で文化祭の準備を切り上げる。
帰り際にメイド服を着るだの、似合うだのどうでもいい話をした。
「じゃあ私そろそろ行こうかな。
バイバイっ!」
心春はそう言って私に背を向ける。
「……っ」
親友が苦しんでるのに何もできない私が情けなくて仕方ない。
「心春…っ」
私は思わず心春を引き止めてしまった。
私の言葉に心春はくるりと私の方に体を向ける。
「ん?なに?どうしたー?」
心春はキョトンとしている。
「あのさ…っ、心春泣かなくなったよね⁇
私の前では泣いてもいいからっ」
「愛花…。
ありがと…」
心春は笑顔から悲しそうな表情に急変する。
けど…
またすぐに笑顔になって
「私ね、泣かないわけじゃないんだ。
泣きたいよ。
でも、1番辛いのは私じゃない。
1番頑張ってるのも私じゃないの…。」
心春…⁇
「うん?」
「全部私じゃなくて早瀬くんだから…。
辛いのも頑張っているのも早瀬くんだから私が泣いちゃいけないと思うの。
早瀬くんが目を覚ました時は笑顔で迎えてあげたいから」
そう言って微笑んだ心春には
正直どこか驚いてる私がいる。
心春がこんなに大人な考えをしているなんて思わなかったから。
…やっぱり恋は人を変えるものなんだね心春。
「そっか…!
心春かっこいいね!
でも相談ならいつでものるよ!?」
「うんっ!
愛花ありがとっ!へへ」
早瀬…。
はやく目を覚ましてよ。
心春に本当の笑顔を取り戻せるのは
早瀬しかいないんだから。
心春だけじゃないよ。
雄介だって早瀬いなくて悲しんでるんだよ?
この人だれ?ってくらいに大人しい時もあるんだから。
それに早瀬いないからクラスでひとりになって浮いちゃってるし。
早瀬、私からもお願いするから
はやく…はやく
戻ってきてよ。
愛花ーサイドーend

