【続】早瀬くん、好き。

愛花ーサイドー


早瀬はまだ目を覚まさない。


あの日からずっと眠ったまま。


心春は眠り続ける早瀬に毎日会いに行っていた。


私や雄介でさえも毎日は行けなかったのに心春は毎日会いに行き続けた。



文化祭の準備だって途中で抜けるのが日課になっている。



「ねぇ、愛花ー!
このペンキはここでいいんだよね?」


青色のペンキのはけを持った心春が私に笑顔を向けて言う。


「あ、うん…」


「了解っ‼︎
ありがとー」



何気ない日常の会話。



事件がおきてから最初の頃の心春はみていられなかった。



笑顔さえめったにみせないし、
たまに私に向ける笑顔だって作り笑いだった。



何度も私の前で涙を見せた。



私なんかに何もできないけど泣いてる心春のそばに寄り添うことだって

勇気づけることだってできた。



けど…




今の心春は最初の頃の心春よりも




見ていられない。





泣くことなんて一切なくなったし




それどころか笑顔ばっかりみせる。



別に笑顔を向けることが悪いなんて言ってるわけじゃないの。




でも…、無理やりすぎた心春の笑顔を


見るたびに私の心が締め付けられる。