選抜オーディションが終わったあの夜
私が彩乃に送ったメールは
このイベントの誘いだった

あの日、帰りがけに和真先生は
このコンテストの宣伝をしていった


『良い刺激になるから、時間があるなら行ってみるといいよ』


確かに良い刺激だ

自分と同年代の子たちが
既に身を削りながらステージに立ち
力強いパフォーマンスを見せている

私の知らない世界を持っている

私は学校の部活のオーディションで
落ちたことより、そっちの方が悔しかった


私も踊りたい

ステージに立つ直前の緊張感が欲しい

ステージに立ったときの熱が欲しい

ステージで踊るスリルが欲しい

ステージで踊り終わった苦しさが欲しい

ステージを去る前の客の裏表のない笑顔が欲しい

ステージを降りた後の物悲しさと
無条件な達成感が欲しい