『ねぇ、イチローって呼んでい?』

不機嫌そうな横顔に聞いた。

オジサンはニコッと微笑むと、

『俺も、名前で呼ばれるのは好きじゃないけど、スズメにだったらいいよ。
特別だからな。』

特別。

とても嬉しい響き。

『ありがと。』

私は軽くキスをした。

『スズメ。』

オジサンが応えてくる。
そうして私たちは体を重ね、愛し合った。

『イチロー…。』

初めてオジサンの名前を呼びながら。

私の心は満ち足りていて、ずっとこの幸せが続くと信じていた。