ダン、ダンッ キュッ…!

「あ~…。カッコいい」
ここは体育館前。
あたしの名前は岸本夏帆。
ちょっと派手で口が悪い高校2年生。
ちなみにバスケ部のエース兼幼なじみの川上廉に
絶賛片想い中。

「夏帆~…。また廉?」
そういっているのは幼なじみの神田麗。
「うん、うん。やっぱ廉ってイケけるメンズ?」
「…何で『イケメン』って言わないのよ」
あたしが廉のどこを好きかというと…。
声、ルックス、バスケの才能…

あぁ!言い出したらキリがない。
でも、それくらい好き。
廉と麗とあたしの3人は小さい頃から仲良くて、
親も仲良かったため、家族と同じぐらい一緒にいた存在。

初めはなんてことなかった。
別に廉を『一人の男』として何て見ていなかったから。
でも、最近は…。
廉の声を聞くたびに、廉の姿を見る度に
心臓の鼓動が早くなっていく。

あたしは物心ついた時から廉のバスケの練習に付き合わされていた。
…小さい時は。

今は麗なんだ。
麗はバスケ部のマネージャーだから。
別に嫉妬ってわけじゃないけど、何か心がモヤモヤする…。

「イケメン!だよね?」
「そぉ?まぁ、イケメンっちゃイケメンだけど別に男として見たことないわ。
 あたし、一応マネだし。 それに、怜の方が絶対イケメンだし」

怜とは廉の1コ上のお兄さん。
ちなみに麗の彼氏。

「う~ん…。怜さんもイケメンだけど…やっぱ廉!!!」

あたしがそういった瞬間。
さっきまでうるさかった体育館内がウソみたいにシーンと静まり返り、
あたしの声が響いた。

皆がものすごくこっちを見てくる。
「あ~あ。夏帆のバカ…」
麗は『あっちゃ~』とでも言うように前髪を後ろにやった。
すると急にほっぺをグイッ と引っ張られた。

前を見ると廉の姿があって…。
「おい、夏帆。『練習の邪魔はするなって言ったよな。ん?」
そういって面白半分に頬を引っ張ってくる。
「痛ぁい!痛い!」
「何が『廉!!!』だ。アホ」
そういうと廉は手をパッと離した。

「ゴメンなさい…。」
あたしは廉が怒ってるのかと思ってうつむいてしまった。
「なんて」
「え…?」
「ちょっとからかっただけだよ。ゴメンな?
 そうだ。今日ウチでご飯食べる?麗も」
キター! と心の中でピョンピョン跳ねた。
「行く!麗も行くよね!?」
「いや…。今日はいいわ!ていうかあたしも練習にいかないと…」
珍しかった。麗が廉の誘いを断るなんて…。
「そっかぁ…。また、行こっ!」
「うん」
「じゃぁ俺、練習戻るわ」
「あ…。あたしも~!」

そう言って廉と麗は練習に行ってしまった。
二人の背中はとても大きく、遠く見えた…。