「……」

小屋から出たら、先に着替え終わったらしい北川がパラソルの下で見知らぬ日焼け野郎に絡まれていた。

「君、綺麗な目してるね」

「あ、えっと……」

「青い瞳なんて、珍しいってよく言われない?」

「ま、まあ……」

隣に立つ岸田と目を合わせて、俺はこめかみをおさえた。

……あいつ、突き放すってことを知らねえのか?

「北川ー」

「あ、和さん、岸田くん!」

俺と岸田の姿を見つけた北川は、こちらへ手を振った。

「誰? 君の知り合い?」

そっちが誰だよ。

「し、知り合いというか……はい」

お前も普通に答えてるんじゃねえ。

こっちに来ようとした北川の腕をつかんだ日焼け野郎は、俺と遊ぼうよなんて厚かましいことを言いやがった。

「い、いえ。あたし、和さんたちと……」

「あ?」

「い、いたっ」

握られた腕に力を入れられたのだろうか、北川が苦痛の声をもらした。

「放してください!」

北川が腕を振ると案外簡単に日焼け野郎の手は離れ、勢い余った北川の腕は日焼け野郎の顔面にぶつかった。

「あ……」

「てめー……!」

たったそれだけでキレたのか、日焼け野郎は腕を振り上げた。

「……おいおい。女に手あげんなよな、男として」

北川の頬を殴ろうとしていた腕をつかみ、俺は幾分か低い声で日焼け野郎を睨んだ。

「北川もさ、もっと拒否れよ。じゃねーとこういうアホには伝わんねえぞ」

「あんだと!?」

アホと言われて更にキレたのか男は怒りの声をあげたが、俺がもう一度睨み付ければ脱兎のごとく走り去った。

「す、すげえ……」

感嘆する岸田は、いつかの不良を殴ったときを思い出させた。