俺らは近くの駐車場に向かう。すでにとめてある俺の車に乗るためである。

「車ん中は冷房してんだろうな?」

「いや、してない。金の無駄だからな」

俺の言葉を聞いてあからさまにショックを受ける岸田。それを苦笑いで見る北川は、またワンピースを着ていた。あのケーキ屋のときとは違う色だがな。

「先生の車、これ?」

ある車の前で俺がとまったからだろう、その車を指差しそう言う北川。

「ああ」

「げっ。松ちゃん意外と金持ち? 外車じゃん」

「つーか北川、先生とか呼んでんじゃねえよ。バレたらどーすんだ」

「あ。……和さん、だったね」

『だった』という言葉に前にも同じようなことがあったのかと首をかしげた岸田の頭を叩き、無理矢理考えを終わらせて、俺は車のドアを開けた。

屋上に三十分もとめていたから、中はかなり暑くなっているだろう。

その証拠に熱気がもやっと出てきて、ガキ二人が顔を歪めた。










車の中が涼しくなってきた頃には、俺が運転する愛車は海の見える高速道路を走っていた。

後部座席に座る二人は、海が見える度に感激の声をもらした。

「和さん、海が見えるよ!」

「松ちゃん、早く!」

はあ……。やっぱガキだ、こいつら。

途中のサービスエリアでメシを食い、高速をおりて駐車場に車をとめた途端に、夏独特の湿気の中に飛び出した北川と岸田は、潮風に髪をなびかせた。










「じゃ、着替えたらこのパラソルの下に集合な」

俺が言い終わる前に二人は、広げたビーチパラソルを離れて着替え専用の小屋に走っていった。