チャイムってのはどうしてこう、華やかじゃないんだろうな。

せめてキーンコーンカーンコーンじゃなく、流行りの曲でも流せばいいのに。

……まあ、そんなことは、他人の夢の話と並んでどうでもいいんだけどな。

「お前ら、明日から一緒に学校来い」

「え?」

「は?」

北川と岸田と俺。三人しかいない静かな教室に、声が響いた。

「俺はもう北川と一緒に来れねえから」

「先生……」

「松ちゃん、どういうことだよ!」

夕陽に染まった俺達をつつむのは、重すぎる空気だった。

出来るならこいつらに、誰かが見てたとか細かい真実は伝えたくない。なぜかと言われれば返答に困るが、面倒になるのが面倒だからとさせてもらおう。

「どういうこともこういうこともない。生徒と登校しちゃいけなかったんだよ」

「な、なんでだよ。なんで一緒に登校しちゃあ……」

「そういう校則……ルールなんだ」

まだ反論しかけた岸田の声を遮って、北川が「松村先生」と俺を呼んだ。

「わかりました。明日から先生とは来ません」

今まで敬語で話したことなんかなかったくせして、こういう時だけ距離を置くんだな。

「……北川が納得しても、俺は納得しねぇ!」

「岸田……」

岸田はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、ギリッと唇を噛むと教室を飛び出していった。

「岸田くん!」

北川も岸田を追って、岸田が忘れていった鞄を持ち教室を出ていった。

「……」

誰もいなくなった教室で、俺は沈む太陽を見るしかなかった。