「別にあたし、いじめられてどうこう言う性格じゃないし。むしろ勝手にしてれば、みたいに思ってたから。一人で全部抱え込んで、あたしはまだ大丈夫だって自分をはげまして、強くなろうって」

「もういい」

「先生……?」

「お前は十分頑張ったよ」

よくたえたな、と言ってから、次なんかあったら俺に話せと命令する。

うんと頷いた北川の横で、今まで黙ってた岸田が声をあげた。

「俺、今日から北川の友達な! はじめまして、岸田翔っつーんだ、よろしく」

「え……?」

「あれ。お前ら顔見知りじゃなかったのか」

ぽかんとしている北川と、はじめましてと言った岸田を見ていると、どうやら初対面らしい。

「岸田。何でお前、北川にあんな必死になってたんだよ」

「そっ……それは……」

あからさまに目をそらす岸田を見て、同じ男である俺は、ははーんと感づく。

「なるほどなぁ……。お前いつ見たんだよ。廊下ですれ違ったとか」

北川に聞こえないように小声でぼそぼそ喋れば、大声で否定が返ってきた。北川が頭にハテナをうかべる。

「アホか、静かに話せ。で、いつ惚れた」

「ほ、惚れっ……!!」

「……何お前。意外に純情?」

「入学式だよっ! 北川、入学式でカッチコッチになっててそこらへんの椅子にぶつかってたの、松ちゃんも見たろ。それで、可愛いって思って……ほ、惚れ、た」

「……あー」

あれか。

椅子を直すのが大変だったということしか、俺の脳内にはメモリーされていない。

「北川」

「ん?」

「俺にも話せよな、なんかあったらさ。……友達、だから」

「……うん!」

こいつらのクラスが違うということが少し悲しいところだが、そんなことはこれっぽっちも気にしていないらしかった。

「ところで聞いてもいいか」

「なに?」

「北川の瞳、なんで青いんだ」

ずっと思っていた。

「ああ……なんか、遠い先祖が外国人らしくて、すごい薄いんだけどあたしにもその血が流れてて、何年も経って覚醒したって聞いた」

……難しいことや面倒くせえのはまっぴらごめんだ。

俺は痛くなったこめかみを押さえた。