徒然なるままに…(日記)

6月7日 土曜日 no.2

かっちんと何気ない会話を繰り返しているうちに、あっという間に病院についた。

「あ?あらー、チャリで転んだかぁ?」

かっちんが病院前に車を入れようとした時に窓の外を見て言った。

かっちんの目線の先には女の子が尻もちついた状態で座り、もう一人女の子がすぐ側に立っていた。大人も2人くらいいる。

「かっちん、ありがとねー」

って、車を降りたけど、女の子が気になった。

とりあえず、大きな荷物を抱えながら女の子に近づいてみた。

あ、車輪に足が挟まってる…しかも、かなりがっつりと。あーあ…

だけど、当の本人は泣いていない。たぶん、ビックリしたのかな。恥ずかしいのと。

女の子の足は完全に自転車のまえタイヤのワイヤーに囚われている。

幸い足関節にかすり傷ひとつ。痛がっていないところを見れば、骨折もしていない。

だけども、男の力でもタイヤの部分に張りめぐされているワイヤーはピクリとも動かない。

まいったなぁ…
ワイヤー切るしかないよなぁ。

気がつけば、かっちんも車から降りて参戦してた。

「かっちん、ニッパーかなんか、これ切るやつある?」

かっちん、車に探しにいってくれたけど持っておらず…

すると、あたしの入院しようとしてる病院の職員が持ってきた。

「自転車、壊れちゃうけど、これ切らないと足抜けないの」

って女の子に伝えて、ここは男手、一緒に参戦してたおじさんに切ってもらった。

無事に女の子の足救出。

あたしも無事に入院。かっちんも仕事へ行った。

入院してからは採血だの、CTだの、点滴だのと忙しい。

少し落ち着いてから暁桜にメール。

『入院した』

と、だけ。返信が来たのは2時間後。

ほらね…急ぎに間に合わないでしょ。昼間はあたしのためには動けないの。暁桜は。

暁桜の返信に、病院の名前と病室の番号を送った。

『後でいくね』

今すぐいくね。って、言われたい…。

暁桜が来たのは店に出る前のほんの少しの時間。

心配そうな暁桜の顔。優しく撫でてキスしてくれる。

「可哀想に…」

って、言ってギュッと抱きしめられると安心する。暁桜の匂い。好き。

暁桜に触れていたくて、ずっと抱きあってた。カーテン閉めて、二人だけの世界。

ずっと、一緒にいたいなぁ…
あ、明日日曜日だ。会えない日だぁ…
…ちぇっ。

意地悪なあたしが目を覚ました。

「なんで明日、逢えないの?」

知ってて聞く。

「………。」

暁桜無言。そりゃそうだ。

「なんで?暁桜からちゃんと聞いたことなかった。なんで?日曜日は逢えないの?」

絡むあたしに少し面倒臭そうな顔をして

「なんでも。」

って、暁桜は答える。

結構粘ったけど、暁桜の口からは家族とか家庭とか嫁って言葉は聞かれなかった。

はっきり、言えばいいのに。

日曜日は家族といる。いたい。大事だから。壊したくないから。

って…。

聞かないからって、理解してるわけじゃないの。

自分にいい聞かせてるだけ。

暁桜は家族を1番愛してる。大切。壊したくないんだって…。

ねぇ、暁桜…

あたし、すごく我慢してる。求めないように自分にいい聞かせてるんだよ。

少しはわかってよ。

その晩の暁桜からのメールに対して、そっけなくしか返事できなかった。

嫁、子供、家庭にはあたし、勝てないことに気付かされたから。

あたしは、どんな最悪な状況にあっても優先されないんだって…


気付かされたから…。

やさぐれた…。