「待って！危ないよ！」

私はそんな声を無視して走る。

「大丈夫だって！いざという時は魔法があるじゃん！」

そう、私たちは魔法が使える。
この世界では当たり前のこと。

「っ！？美麗前！前見て！」
「え？何言って…きゃぁぁぁぁああ！」

私は崖から転落したー




「"フライ"」

と、誰かが呪文を唱えた。
その呪文と共に私の身体は重力から開放される。

「危ないだろ。」

ストンッー
私の足は地面についた。

「美麗！…死ぬかとおもったよ…っ。本当に心配したんだからっ！」

と香凜は泣きながら私に駆け寄ってきた。

「ありがとう。私が…前を見ないで…香凜の言うことを無視したから…っ。ごめんっ…。」

自分でも手が震えてるのが分かる。

…本当に怖かったんだ。
あの時、もう死ぬんじゃないかっておもって、焦って魔法を使うことも出来なかった。
あの時香凜が魔法を使ってくれなかったら私はもうこの世にいなかった…と思う。
「香凜…本当に助かったよ。ありがとう。」
「何のこと？」

えっ？あの時魔法を使ってくれたのは香凜じゃないの？
じゃあ一体誰が私を助けてくれたの？

「あっ…そうそう。この子にもお礼、いいなよ。美麗を助けてくれたんだからっ！」
「…」

この男の子が？私を？
でも私は彼を知らない。あったこともない。

「えっと、あの…」
「礼はいい。これからは気をつけろよ。」
そう言って彼は瞬間移動の呪文を唱え、私たちの前から姿を消した。