東都航空ホテル。

ここが日向の目的地である。
とはいえ、目的の階は上の方だったはず。時間に余裕はない。

エントランスを抜けて、ロビーにはいると、ホテルで行われるイベントの案内が出ていた。

目的階を確認する。

32階。

日向は急いで、エレベーターホールに向かった。

エレベーターホールには、日向と同じように、真新しいスーツに身を包んだ男女がいた。

皆、雨に降られて濡れていた。

エレベーターホールにある全身鏡でさっとみだしなみを整える。

隣に立っている男の子はズボンの裾をびしょ濡れにしていた。

男の子は大変だな、と場違いな感想が脳裏をよぎる。

鈍い電子音がして、ホールにエレベーターが到着した。

みんな、日向と同じ目的地を目指している。
誰かが32階のボタンを押して、エレベーターは動き始めた。

妙に長く感じる時間の後、エレベーターは32階に到着した。

皆が同じ方向に歩きだす。

そのさきには、大きなホールがあり、入場受け付けがあった。

受け付けの近くには、書き割りが出ている。

日向は、それを確認した。

『東都航空事務系職員会社説明会』