「「「「………。」」」」
嘘だろ?
俺と、木村さん、べべ、山吹さんが無言で固まった。
だけど、向こうのスタッフは知っていたようで、慌てた表情だが、驚いた様子はない。
ウィリスは床にしゃがみこみ、泣き出した。
「…レイ、知ってたのか?」
そうだよな、知らなくてあんな危険な事をしないよな。
レイは、新しいタバコをくわえ、火をつけると俺を見た。
「私を誰だと思ってる?医者が人毛かそうでないかくらい見分けがつかなくてどうする。」
平然とレイが言いはなった。
床にしゃがみこみ、泣いているウィリスは燃えかけて慌てて外したカツラを手に、おでこが随分後ろに後退し、M型になった生え際をさらしている。
つまり、30歳にして、若ハゲだった。
泣いているウィリスの前にレイは立ち、くわえタバコのまま、ウィリスに目線をあわせてしゃがみこんだ。
「『大丈夫だ、ここは個室で、スタッフしかいない。ここだけの話だ。』って言葉、今聞いてどう思う?お前、山吹さんの気持ちがわかるか?」
泣いていたウィリスが、そのレイの言葉にハッとした。
「お、俺…。」
漸く、自分のしたことに気がついたようだ。
「じゃあ、山吹さんにきっちり謝れ。」
レイはそう言って、ウィリスにタバコの煙を吹き付けた。
咳込むウィリス。
だけど、涙目できちんと山吹さんに謝った。

